2013年08月03日

8/1 蝉の一生

 あの頃決まって、私とあなたは蚊を追い払いながら、木に登っていく蝉の幼虫を見ていた。長い年月を経て空を飛べる日を今かと待ち構える幼虫たちに胸をときめかせながら。
 そして、翌日、私は一人で木の根元に転がる、中身の入ったぬけがらたちを片付けた。幼いあなたの目にふれないように。積もらせた力がきっと羽ばたくと信じているあなたよ。いつか、あなたが木にしがみついて、その爪がふるえる時に、背中が割れただけの、中身の詰まったぬけがらを無力だと思わないように。その時まで、私は静かにぬけがらを葬ろう。
posted by かみうお at 08:45| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

7/31 夏の風物詩

 まさかまさかと思っていたことが、実際になると相当びっくりするものだ。
 グリーンカーテンは夏の風物詩だが、そう来るとは思わなかった。
「お母さん!あれ!赤いのがなってるよ!」
「ほんとだ!まさかそう来るとは思わなかった!!」
毎日通りすがる、あるお宅。西の窓に立てかけるグリーンカーテンは、トマトだった。

 緑の葉に真っ赤な実。
 ブロック塀の灰色の向こうで、みっしりと繁って西日を防ぎ、いかにも得意そうだった。
posted by かみうお at 08:39| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

7/30 神を名乗る

 ドアの前に座っているこどもがいる。なんというかステレオタイプの昔話のこどもで、おかっぱに和服。白目のない両目が真っ白な顔に光っている。座敷わらしでいいのかしらと尋ねると、あなたはうなづいた。何をしにきたの、というとお宅の貧乏神と交替に来たと言った。わたしは、あれも長い付き合いだし、追い出しても貧乏が恥になる世の中では寝心地も悪かろうからと説明すると、それでは私も行き場がないとめそめそしだした。しょうがないので手を取って、いっしょに住めばいいじゃないと家に入った。神を名乗るものがまた増えた日。
posted by かみうお at 08:35| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

7/29 孤立

 帰国して、一学年を重ねて周囲は皆年下になった。異人さんと呼ばれて振り返れば教師が私の髪を見て首を傾げている。外国にいたら髪の色も変わるのかしらと。そんなことは無いと思うけれど内地の人の髪は本当に黒いのだった。一年進んでいた私は最初はことばでからかわれ、無視していたら、人が道を開けるようになった。その頃また教師から言われた。あなたは毅然としているね、と。毅然とは良い言葉だ。うっとうしさから遠ざかり、ひたすらに技術を求めることができるではないか。孤立を上回る自由。やっと手に入れた。
     (女学校四年で帰国した祖母の語りから)
posted by かみうお at 08:30| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

7/28 心霊体験

 父が運転する車に姉と乗っていた時のことです。峠を登り切る手前に女が立っているのが見えました。夜中でしたので父は気の毒がって乗せていこうかと言ったのですが、峠の幽霊の話を聞いていた私と姉は怖がって止めました。後続の一台が、その女を乗せたのが見えました。暫く走りますと道が広くなり、分岐するところがあります。そこで、後続車と並んだのですが、その車には運転手一人しか乗っていませんでした。(友人からの聞き書き。場所は福岡県冷水峠。30年以上前の話)※峠を登り切る前に妖が立っていて、車に乗せてはならないという伝承は各地にある。香港にも同じような話があるとか。

 
posted by かみうお at 07:44| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

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