2013年08月16日

8/8 蒸し暑い (詩)

大きく透き通った透明な枡に入りきれない水を無理矢理に詰め
やるせなさを弱火にかけて
輻射熱で焙られる
肺腑を痛める熱さにきっと見えなくなるものがある
アレハドウシタコレハドウシタソンナモノハオイテオケ
今日はむしあついですね そうですね
真っ白な日差しに隠れて 灰色のものが静かに進む
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2013年08月14日

8/10 日に焼けた腕

 亡夫の同僚だったという方が訪ねてきた。座敷の上座にきっちりと正座したその方とは、父が話してくれている。冷たい井戸水と、曲がった胡瓜くらいしか出せるものが無いのを申し訳なく思う。時世だから仕方ないけれど、我が家にもいらしたことがあったのだろうか。本当に数少なく、亡夫が催した宴で彼が機嫌よくマンドリンを弾いていた姿を思い出した。歌ったことも、あったのかしら。
 お前もおいで。お話されたいそうだよ。
 父から言われて、私も座敷に赴いた。顔を見るのは失礼だから、私が見たのはその方の正座した膝と置かれた拳だった。
「軍曹には航空隊時代お世話になりまして」
めっそうもない、と私はこたえる。
「出撃されたまま、お帰りにならなかった。」
一呼吸おいて、同期で残ったのは自分だけです、と続けた。
「こうして、同期の家庭を失礼ながら一軒一軒回らせていただいております」
カナカナと蝉の声が変わった。
「どうして、自分は生きているのでしょう」
私はほんの少し、視線を上げた。彼の腕が見えた。よく日に焼けた腕だった。


 何年もたって、それから?と尋ねる孫に私はくりかえし、その話を聞かせた。

 あの人、どうしてるかねえ。
 生きていてほしいねえ。

 カナカナ蝉が鳴くと、日焼けして行きかう人々に、私は彼を思い出す。


 ※祖母の語りから。祖父は陸軍航空隊所属。教官をしていて同期は一人を残して戦死したとか。
生き残りの一人の方は順番に同期の家庭を訪れ、この小説の通りのことを言って去られたとのこと。
消息はその後不明。
「生きていてほしい」は物ごころついたときから、私と祖母の毎年の会話になった。
posted by かみうお at 01:37| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

2013年08月04日

8/4 私のポジション

 飢えている、とあなたが言った。読むものには不足してないでしょうにと言ったら、違うの飢えてるの、という。さて、何に飢えているのか。新鮮さか、善意か、美か、真か。近い近いと畳を転がりながら、落ちたメモを拾いに行くあなた。
 菊田一夫さんて知ってる? 

 「放浪記」「君の名は」「ダル・レークの恋」

 まあ、その人だよ。その人が「放浪記」だっけ
  

  たとえば留置場に入りますね…その中にいる間中、汁粉を食べたい、豆大福を食べたいと思う…出ると早速食います…そう食えるもんじゃない。だけど一度は腹一杯食べる。腹がくちくなると、何だこんな味だったのかと思う。それからゆっくり、他のあっさりしたものを食べるんです。  (『放浪記』菊田一夫)

 ほうほう

 つまり、今のあなたの心境は、お汁粉食べたい、豆大福食べたいと言う心境ではないかね。

 ああ、そうかも。なんだかおなかいっぱいになりたい。

 そして、とりあえず一度は腹一杯にするのが私のポジションですかね。

 いや、それはもうしわけないです。自炊させてください。
 
posted by かみうお at 15:55| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

8/3 間違えた

 炭鉱の坑道というところは、危険なものでございますから坑夫というものには、様々な決まりごとがございました。まず、汁かけ飯というものを嫌います。落盤につながるというのが理由です。子どもがしようものなら、叩かれても不思議ではありませんでした。他に途中で上がる時の弁当は持って帰りません。坑道に置いて坑内の鼠に食べさせます。鼠というものは気配を覚っていち早く動くので大切にいたしました。鼠といえば坑内では不思議なことが色々とありまして、たまに柱が逆さに立っていることがあるのですがそういう時はタヌキが化けているのです。ある時坑夫のひとりが逆さ柱を気にせず、持っていた薬缶を掛けましたところ
「あ、間違えた」
と声がしたと思ったら、がしゃんと薬缶が落ちたと。はい、柱も消えておりまして、タヌキの仕業だったそうです。
  (炭鉱関連で働いていた曾祖父の話を祖母から聞きとる)
posted by かみうお at 15:37| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

2013年08月03日

8/2 電波

 電波の届かないところか、電源を切ってるらしいよ、とあなたが言う。待ち人はあなたのお父さんだから気にしなくていいよと私は伝えた。あなたは、おかあさん、だいじょうぶなの?と聞くから、お父さんレーダー持ってるから、と答えておいた。昔昔、ポケベルも携帯も無かったころ、お父さんは固定電話も持ってなかった。駅の伝言板を皆が使う時代に、お母さんはお父さんとそんなものを一回も使ったことがないと自慢してみた。
 そんなことがあるの、そんなことができるの、というから友達と空き教室で待っててお母さんが扉を見て
「今、来るよ」
言い終わった瞬間に、ドアがノックされたのが一回どころじゃないと、胸を張ってみる。どうだい! 
 携帯会社あがったりじゃん、とあなたが笑う。
 自動ドアが開いて、あなたのおとうさんが入ってきた。
 何わらってんだよ、というので、わざとのように笑った。
posted by かみうお at 23:10| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

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