私から話すことは少なくなり、あなたがぽつぽつと言葉を拾うようになっていた。今話しているのは海に行った時のことだった。外洋と内海を一本の道の左右で見たその場所を、あなたは懐かしく語る。
ああ、そういえばと私は思いだす。砂浜を歩いたとき、丸々と光るものを見つけたのだった。砂に埋もれて透明に固まるそれは、引き潮に乗り損ねたクラゲの死骸だった。
そんな丸く光る死骸が、気がつけば砂浜のあちこちに黙って、ボタンのように埋まっていたのだ。かつての柔らかさなど、どこにも無く。
虚ろな、虚ろな、会話の中で引き潮に乗り損ねたクラゲを思い出した。
砂浜に固まって咲いた海の月達。
また海に行きたいね、とあなたが言った。
そうね、と私はこたえた。