2013年08月04日

8/4 私のポジション

 飢えている、とあなたが言った。読むものには不足してないでしょうにと言ったら、違うの飢えてるの、という。さて、何に飢えているのか。新鮮さか、善意か、美か、真か。近い近いと畳を転がりながら、落ちたメモを拾いに行くあなた。
 菊田一夫さんて知ってる? 

 「放浪記」「君の名は」「ダル・レークの恋」

 まあ、その人だよ。その人が「放浪記」だっけ
  

  たとえば留置場に入りますね…その中にいる間中、汁粉を食べたい、豆大福を食べたいと思う…出ると早速食います…そう食えるもんじゃない。だけど一度は腹一杯食べる。腹がくちくなると、何だこんな味だったのかと思う。それからゆっくり、他のあっさりしたものを食べるんです。  (『放浪記』菊田一夫)

 ほうほう

 つまり、今のあなたの心境は、お汁粉食べたい、豆大福食べたいと言う心境ではないかね。

 ああ、そうかも。なんだかおなかいっぱいになりたい。

 そして、とりあえず一度は腹一杯にするのが私のポジションですかね。

 いや、それはもうしわけないです。自炊させてください。
 
posted by かみうお at 15:55| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

8/3 間違えた

 炭鉱の坑道というところは、危険なものでございますから坑夫というものには、様々な決まりごとがございました。まず、汁かけ飯というものを嫌います。落盤につながるというのが理由です。子どもがしようものなら、叩かれても不思議ではありませんでした。他に途中で上がる時の弁当は持って帰りません。坑道に置いて坑内の鼠に食べさせます。鼠というものは気配を覚っていち早く動くので大切にいたしました。鼠といえば坑内では不思議なことが色々とありまして、たまに柱が逆さに立っていることがあるのですがそういう時はタヌキが化けているのです。ある時坑夫のひとりが逆さ柱を気にせず、持っていた薬缶を掛けましたところ
「あ、間違えた」
と声がしたと思ったら、がしゃんと薬缶が落ちたと。はい、柱も消えておりまして、タヌキの仕業だったそうです。
  (炭鉱関連で働いていた曾祖父の話を祖母から聞きとる)
posted by かみうお at 15:37| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

2013年08月03日

8/2 電波

 電波の届かないところか、電源を切ってるらしいよ、とあなたが言う。待ち人はあなたのお父さんだから気にしなくていいよと私は伝えた。あなたは、おかあさん、だいじょうぶなの?と聞くから、お父さんレーダー持ってるから、と答えておいた。昔昔、ポケベルも携帯も無かったころ、お父さんは固定電話も持ってなかった。駅の伝言板を皆が使う時代に、お母さんはお父さんとそんなものを一回も使ったことがないと自慢してみた。
 そんなことがあるの、そんなことができるの、というから友達と空き教室で待っててお母さんが扉を見て
「今、来るよ」
言い終わった瞬間に、ドアがノックされたのが一回どころじゃないと、胸を張ってみる。どうだい! 
 携帯会社あがったりじゃん、とあなたが笑う。
 自動ドアが開いて、あなたのおとうさんが入ってきた。
 何わらってんだよ、というので、わざとのように笑った。
posted by かみうお at 23:10| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

8/1 蝉の一生

 あの頃決まって、私とあなたは蚊を追い払いながら、木に登っていく蝉の幼虫を見ていた。長い年月を経て空を飛べる日を今かと待ち構える幼虫たちに胸をときめかせながら。
 そして、翌日、私は一人で木の根元に転がる、中身の入ったぬけがらたちを片付けた。幼いあなたの目にふれないように。積もらせた力がきっと羽ばたくと信じているあなたよ。いつか、あなたが木にしがみついて、その爪がふるえる時に、背中が割れただけの、中身の詰まったぬけがらを無力だと思わないように。その時まで、私は静かにぬけがらを葬ろう。
posted by かみうお at 08:45| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

7/31 夏の風物詩

 まさかまさかと思っていたことが、実際になると相当びっくりするものだ。
 グリーンカーテンは夏の風物詩だが、そう来るとは思わなかった。
「お母さん!あれ!赤いのがなってるよ!」
「ほんとだ!まさかそう来るとは思わなかった!!」
毎日通りすがる、あるお宅。西の窓に立てかけるグリーンカーテンは、トマトだった。

 緑の葉に真っ赤な実。
 ブロック塀の灰色の向こうで、みっしりと繁って西日を防ぎ、いかにも得意そうだった。
posted by かみうお at 08:39| Comment(0) | かみうお | 更新情報をチェックする

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